「高血糖」と判定されたら

高血糖(血液中のブドウ糖が多い状態)が続くと、全身の血管に障害が起こります。糖尿病になり重症化すると、失明や腎不全などの合併症、さらには心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を発症します。

※ ここでは、体質や生活習慣が発症の要因となる2型糖尿病について説明しています。

 

糖尿病「予備群」のうちに改善を

健診で高血糖と判定されても、自覚症状もな いし元気だからと放置していませんか? 空 腹時血糖が100 を超えると、糖尿病の 発症リスクが2倍以上になるとされています。 2018年に特定健診を受けた約414万人の うち、空腹時血糖が100 以上の人は 32.1%で、約3人に1人は糖尿病、またはそのリ スクが高い状態でした()。

高血糖を放置して糖尿病になってしまうと、 血液中のブドウ糖によって血管がダメージを 受けて動脈硬化を起こし、脳卒中や心筋梗塞 など命に関わる病気を発症します。ほかにも、 合併症で糖尿病網膜症や糖尿病神経障害を発 症して失明や壊え 疽そ が起こったり、糖尿病腎症 を発症して人工透析が必要になったりします。 また、新型コロナウイルス感染症の重症化リ スク因子でもあり、糖尿病の人は致死率が高 いとされています。

そして一度糖尿病になると、基本的に完治 することはありません。医療機関での適切な 治療や服薬に加え、食事・運動療法で血糖値 をコントロールしながら生活することになり ます。特定健診で「高血糖」と判定された方 は、糖尿病予備群です。糖尿病を発症する前に、 今から改善に取り組みましょう。

 健康保険組合連合会「平成 30 年度 健診検査値から みた加入者( 40-74 歳)の健康状態に関する調査」 (2020年 11 月)

食生活の見直しと継続的な運動がもっとも大切

高血糖は主に、糖質やアルコールのとりすぎなどの食生活の乱れ、運動不足、喫煙などが原因で起こります。改善に必要なことは、食生活の見直しと運動習慣の継続、これに尽きます。食事は、極端な糖質制限をする必要はありません。ダブル炭水化物のメニューや、砂糖入り飲料の常飲を控えるなど、炭水化物のとりすぎに気をつけてください。外食のメニューや加工食品は糖質過多になりやすいので、できるだけ自炊をしたり、加工食品は食品成分表を確認したりして、糖質量をコントロールしましょう。ストレスをため込むと暴飲暴食になりやすいため、趣味やリラックスする時間をもつことも大切です。

運動は、思いきってジムに通い始めるのもよいですが、急に強度の高い運動をすると心臓に負担がかかり危険です。まずは、起床後や就寝前にストレッチをするなど、がんばらなくてもできることから始めましょう。もの足りなくなってきたら筋トレやジョギングなど、本格的な運動を始めてみてください。

また、糖尿病と歯周病の関連が明らかになっており、歯周病治療で糖尿病が改善するという報告もあります。定期的な歯科健診でお口の健康を維持することも大切です。上記を参考に自分で無理なくできることから高血糖改善に取り組みましょう。

今日からできるセルフケア

ダブル炭水化物は避ける

高血糖の人がとくに気をつけたいのは、外食のメニューに多い 「ラーメンとチャーハン」「パスタとパン」などのダブル炭水化 物と、糖質の多いおかずやサラダ(コロッケや餃子、ポテトサ ラダなど)です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」では、糖質から摂取するエネルギー量が総エネルギー 摂取量の50 ~ 65%になるよう推奨しています。たんぱく質 や脂質もバランスよくとりましょう。

 

スポーツドリンク、野菜ジュースに注意

糖質のとりすぎがよくないと理解している人でも見落としがちなのが、スポーツドリンクや野菜ジュースです。一見、どちらも体によさそうなイメージがありますが、想像以上にたくさんの糖質が含まれています。これらにも糖質が含まれていることを理解したうえで、飲みすぎには注意してください。

 

食後30分以内に、こまめに動く

運動習慣がない人におすすめなのが、筋トレやジョギングなど の本格的な運動ではなく、掃除や買い物など日常生活での身体 活動を増やすことです。デスクワークの人はとくに、こまめに 動くことを意識しましょう。血糖値が上昇しやすい食後30 分 以内に行うとより効果的です。ランチ後にウオーキングする、 夕食後は食器洗いやお風呂掃除をするなどして体を動かしま しょう。

 

監修 奈良 信雄(順天堂大学客員教授)